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2005年 12月 03日
11月号のDevelopmental Cellに、「Endocytic traffickingの欠陥がnon-cell autonomousな細胞増殖を引き起こす」という内容の論文が3つのラボから報告された。cell-cell communicationに興味のある僕にとってはいずれも大事な論文なので、一報ずつメモしておくことにする。
Vaccari T, Bilder D. The Drosophila tumor suppressor vps25 prevents nonautonomous overproliferation by regulating notch trafficking. Dev Cell. 2005 Nov;9(5):687-98. まず一報目は、UC BerkeleyのDavid Bilderラボからの報告。BilderはPerrimon研でのポスドク時代にショウジョウバエのneoplastic tumor suppressorでありapico-basal polarity geneでもあるscribble (scrib)、discs large (dlg)、lethal giant larvae (lgl)に関するきわめて重要な仕事をしてきた人で、あの若さにしてすでにこのフィールドの第一人者の一人である。 今回の論文は、これまでと同様にimaginal disc cellやfollicle cellにおいてepithelial organizationがおかしくなるmutantのスクリーニングを行い、A3というmutantを単離したというところから始まる。A3 mutant cellでは、apical側のみに局在するはずのaPKCがcell cortex全体にわたって分配されていた。さらに、Dlg及びE-cadherin(それぞれlateral及びjunctional domainのmarker)の発現はいずれも低下していた。これらの結果は、apical plasma membraneがexpansionしていることを意味しており、つまりA3 mutant cellがapico-basal polarityを失っていることを示している。モザイククローン解析により、この極性の喪失はcell autonomousであることが分かった。興味深いことに、eyFLP/cell lethal systemによりeye discを構成するほぼ全ての細胞をA3 mutantにすると、これらの細胞は極度に過増殖して巨大なeye discを形成した。一方、Deficency系統とのトランスへテロを用いたlethal phase analysisにより、A3アリルはgenetic nullであることも示された。 変異のマッピングは非常に簡単で、ラッキーにも既存のP-inserted lethal lineに当たった。heat-shockプロモーターを用いたレスキュー実験も行い、原因遺伝子がyeastのvps25ホモログであることを確認した。Vps25は、Vps22やVps36とともにendosomal pathwayにおいてprotein sortingを担うESCRT-II (Endosomal Sorting Complex Required for Transport-II) complexのコンポーネントの一つとして知られている。 さて、ESCRT proteinは、yeastにおいてユビキチン化された膜タンパクのsortingに必須である。yeastの場合と同様、このショウジョウバエvps25変異クローンのエンドソーム内にもやはりユビキチン化タンパクの蓄積が観察された。vps25変異クローンをeye discに誘導してadultの複眼の表現型を観察したところ、興味深いことが分かった。すなわち、この変異クローン自体は発生過程で消滅してしまうが、代わりに周囲のwild typeクローンの増殖を強く促進し、結果的に巨大な複眼を形成したのだ。実際にeye disc上では、変異クローン自体はcaspaseを活性化して細胞死を引き起こし、一方その周囲の細胞のBrdU incorporationは強く増大して、結果的にeye discサイズも増大していた。ちなみに、このBrdU incorporationの増大は、morphogenetic furrowのanterior側でしか見られなかった。 では、なぜEndocytic pathwayの阻害によってこのような現象が引き起こされるのか?彼らはそのメカニズムに迫るため、その活性が高度にendocytosisに依存しているNotchに着目した。eye discを構成する上皮細胞において、通常Notchはそのapical surfaceに局在する(一部は細胞質にpunctateに存在する)。ところが、vps25変異クローン内では、Notchはapical表面から消失して細胞質内のpunctateに強く蓄積していた。 さらに、細胞外Notch抗体とtemperature shiftを用いたliveでのNotch trafficking assayをeye discにおいて行った結果、正常細胞ではNotchは6hr後にはエンドサイトーシス/分解されて消失するのに対し、vps25変異細胞ではinternalizeはされるもののその後のtraffickingがブロックされて分解されずに蓄積していくことが分かった。また、各種endosomal markersでNotchが蓄積するコンパートメントを解析した結果、通常はRab7-GFPなどのlate endosomal markerと共局在するはずのものが、vps25変異細胞ではHrsなどのearly endosomal markerと共局在していることが分かった。 さて、彼らがNotchに着目した理由は、imaginal discにおいてNotchの異所的な活性化がnon-cell autonomousなtissue growthを引き起こす、ということがすでに知られているからである。つまり、次に重要な問いは、この蓄積したNotchに活性があるのか?という点である。Notch signalingのreporterである E(spl)mb-lacZを用いてこれを調べたところ、果たしてvps25変異クローン内でNotch signalingの活性化が起きていた。このNotchの活性化がどのようにして周辺細胞の増殖を誘導するのか?これにアドレスするために、彼らはNotch signalingのターゲットの一つであるUnpaired (Upd)に着目した。Updはサイトカイン様の分泌タンパクで、JAK-STAT pathwayを活性化するリガンドである。実際に、vps25変異クローン内においてUpdの発現は上昇していた。さらに、ショウジョウバエのSTATであるSTAT92Eの遺伝子量を半分に減らすことで、このnon-cell autonomousなtissue growthは部分的に抑制された。vps25変異クローン内でNotch inverted-repeatを共発現させるとUpdの発現上昇が完全に抑えられたことから、Notchの直接的な関与が示された。しかしながら、Notch RNAiを発現させた時のtissue growthに及ぼす影響については全く触れられておらず、やや不満は残る。 「vps25変異—Endocytic pathwayの阻害—Notchの蓄積と活性化—Updの発現上昇—周辺細胞の増殖」というシナリオはとてもシンプルで分かりやすい。ただ、これは単なる三段論法によって説明されているに過ぎず、この経路がどれだけ実質的に関わっているのかについてはまだ疑問が残る。しかしながら、endosormal sortingの欠陥がnon-cell autonomousな細胞増殖を引き起こすということを遺伝学的に示したこの論文は、きわめて重要である。
by maplefly
| 2005-12-03 23:06
| 論文
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