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2006年 04月 19日
スタンフォードLiqun Luoラボのポスドク、HZさんのトークを聞く。マウスで遺伝的モザイクを作り出して変異細胞をポジティブラベルする、あのMADM (Mosaic Analysis with Double Markers) systemを開発した人である(論文は以下)。
Zong H, Espinosa JS, Su HH, Muzumdar MD, Luo L. Mosaic analysis with double markers in mice. Cell. 2005 May 6;121(3):479-92. 言うまでもなく、Luoラボはハエのモザイクラベリングシステム、MARCM system(Lee & Luo, 1999)を開発したところ。今回の仕事は、同様のシステムをマウスにも適用しようというものである。もちろん多くのラボがトライしていたことなのだろうが、論文が出た時にはやはり驚かされた。そして、内容を見た時には、その仕組みの巧妙さに唸らされた。 そもそもMADMの原理はMARCMのそれとは全く異なる。ハエでは部位特異的な染色体間の組み換えを誘導するのにFRT/FLP systemが非常によくワークするのだが、MADMではCre-loxP systemを用いる。また、ハエのMARCMではGal4/Gal80/UAS systemを用いて変異細胞のみを蛍光ラベルするのに対し、マウスMADMではGFP及びRFPをコードする遺伝子をそれぞれ半分に分断し、それぞれのN末とC末を別々の染色体に配置させ、それらの染色体間で組み換えが起こった場合にのみ正常なタンパクが産生されて蛍光を発する(変異細胞はGFP、wild type細胞はRFPというように)という素晴らしい仕組みになっている。 この系がワークするのをきれいに示したのが上記のCell paperであり、仕事量も半端でない。今回のトークでは、さらにこの系を用いてp27kip1の機能喪失変異のモザイク解析の結果を示していた。モザイク解析を適用することによって、マウスp27変異は細胞の増殖速度を上昇させるのではなく、細胞が分化すべき時期に達してもなお増殖し続けることによって結果的に細胞数が増える、ということが明らかとなった。 MADM systemが極めてパワフルな手法であることは言うまでもないが、同時に、現段階ではいくつかの欠点は否めないだろう。例えば、MADMコンストラクトはsilencing effectを防ぎかつ発現量を高めるためにROSA26 locusにノックインされていなければならない。つまり、現時点では第6染色体のみでしかこの手法は適用できない。他の染色体に適用するためには、こういったlocusにノックインする必要のないようなジーンカセットを構築する必要があるだろう。また、目的のアリル上に組み換え等を利用して別の変異を導入するのも、ハエの場合とは比べ物にならないくらい大変なはずだ。さらに、MADMでは原理上4種類の遺伝子型の娘細胞が生じるわけであり、必然的にホモ変異クローンのサイズは小さくなる。単一細胞レベルでの解析には問題ないだろうが、拡散分子を介した細胞間相互作用や細胞非自律性の解析は困難であろう。 実はトークの前、スピーカーのHZさんと共に昼食をとる機会を得た。とても気さくで、おもしろい方だった。やはり、ラボメイトだった日本人のTCさんと共に、かなりのハードワーカーだったらしい。なぜマウスでGal4/Gal80のシステムを使わなかったのか尋ねたところ、へぇ〜なるほど、というような回答が返ってきた。しかし、このような画期的なシステムを開発したような方でも、ジョブ・ハンティングには多少なりとも苦労しているらしい。マウス・ジェネティクスにかかる莫大なコストが難点の一つのようだった。ともあれ、長い時間をかけて一つの大きな仕事を成し遂げた人の話には、いつも感動させられる。
by maplefly
| 2006-04-19 01:06
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