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2006年 03月 24日
先日SKと話をしていて議論になった話題。SKが「単細胞生物はアポトーシスを起こさない」というのを進化の一例として挙げてきたのに対して、僕が「Yeastはアポトーシスを起こすよ。バクテリアでさえプログラム細胞死を起こすよ」と反論したのがことの始まり。まぁ、アメリカの教育システムがそうなっているんだろうけど、普段温厚なSKも議論になったら俄然勢い付いて何が何でも勝とうとしてくる。まぁ、勉強になるからいいんだけど。
SKは、「単細胞生物がアポトーシスを起こすなんて理にかなっていないので信じない」と言い張る。そうは言っても、実際にYeastがアポトーシス様の細胞死を起こすことは報告されているのだ。例えば、John Reedによる以下の総説にまとめられている。 Jin C, Reed JC Yeast and apoptosis. Nat Rev Mol Cell Biol. 2002 Jun;3(6):453-9. Review. そもそもよくある誤解だが、“apoptosis”は概念的な用語ではない。1972年にKerr & Wyllieが定義したのは「necrosisとは異なる細胞死の形態」であって、つまりはこの言葉は形態学的な意味しかもたない。多くのプログラム細胞死がアポトーシスの形態をとることから、最近ではこれらがよくごっちゃにされて使われているが、もちろんこれは正しくない。SKも“apoptosis”を「不要な細胞の自殺」と解釈したらしく、「他の個体のために自殺する個体なんてありえない」というのが彼の主張だった。その点では、僕も彼の考えに賛同する。 さて、上記のReed総説によると、yeastはアポトーシスの制御分子群であるBcl-2-、CARD-、DD-、DED-family proteinをもっていない。一方で、caspase-like proteinはちゃんともっている。このcaspaseはmetacaspase familyに属するもので、その酵素活性やyeast細胞死への関与が実験的に示されている。Yeastを酢酸やUV、過酸化水素などで処理すると、DNAの断片化(TUNEL陽性)、クロマチンの凝集、phosphatidylserineのexposureなどの典型的な“アポトーシス”の形態を呈して細胞は死に至る。しかも、これらの細胞死はタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドで抑制されることから、タンパク合成を介したいわゆる“能動的な”細胞死と考えられる。以上のことから、「Yeastはアポトーシスを起こすか?」という問いに対する答えは、“Yes”ということになるだろう。 では、この細胞死にはどんな意味があるのか。どれだけの証拠があるのか知らないが、Reedは次のように概説している。すなわち、単細胞生物はウイルス病原体との接触や栄養の枯渇、その他の有害な状況下において“cell suicide”の機構を発動し、これによって生存可能な個体数を常に維持している。つまり、一部が生き残りさえすればゲノムが繁殖する、というストラテジーをとっているのである。本当だろうか?まぁ、おもしろくて魅力的なアイデアではあるが、僕はにわかには賛同できない。そもそも、「Yeastもアポトーシスを起こす」とは言っても、そのメカニズムも意味合いも多細胞生物のそれとは全く異なるはずだ。だから、概念的に言えば僕もSKの考えと同じになる。 誤解のないように付け加えておくと、Reedたちはyeastを多細胞生物の細胞死を理解するためのツールとして使えると主張しているわけであって、それに対しては全く反論の余地はない。ただ、yeastの細胞死自体を研究するのは、あまり意味のないことだろうと思う。
by maplefly
| 2006-03-24 00:01
| 論文
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